田中ひろ子のノボシビルスク通信(5)
(「日本とユーラシア大阪府連版」2009年4月15日号掲載)
現在のロシア市民にとって最大の祝日は「新年」、次に「5月9日戦勝記念日」ですが、極寒のシベリアでは「3月8日国際婦人デー」が、待ち焦がれた春の訪れを予感させるものとして大きな意味を持っています。今年は3月8日が日曜日にあたり、7、8、9日の3連休。その前の5、6日ごろから祝日ムードになり、街行く人々の表情もどことなく明るく楽しげです。杏菜の学ぶノボシビルスク特別音楽学校でも、クラスでは男の子達がお金を出し合って、女の子ひとりひとりへのプレゼントとケーキを用意しました。また校長、副校長先生、事務職員等の成人男性は一団となって校内をまわり、女性職員のひとりひとりに花束とチョコレートをプレゼントして歩きました。その際、美しく甘い祝辞は不可欠です。「女であるというだけで価値があり、誇らしく、男は女に尽くすことに見栄をかける」というロシアの騎士道的男女関係がよくみえる祝日です。ところが「いいねえ、日本では3月8日は祝日でも何でもないし、花なんかくれないよ」というと、「ロシアのように年に1回だけ女性への感謝を思い出すより、常に女性を大切にする日本の方がいいにきまっている」という返事でした!ちなみにロシアではこの種の祝日は前祝いが当然ですが、誕生日は前もって祝うことは厳禁です。とりわけ赤ちゃんが生まれる前は、一切何の準備もするべきでなく、生まれてからあわててベビーベッドや衣類を買いに走るのです。これは予祝の伝統を持つ日本、韓国とは対照的に、「ねたみ目」を恐れるロシア文化によります。