田中ひろ子のノボシビルスク通信(2)
(「日本とユーラシア大阪府連版」2008年12月15日号掲載)

これぞ、ロシアの伝統!?超複雑な国際小包の発送手続き

日ユ協会大阪府連の皆様、こんにちは。ノボシビルスクから田中ひろ子がレポートします。成長期の子供のように年ごと、いや月ごとに大きな変化をとげるロシア社会は、コンピュータによるオンライン化、町に溢れる自家用車、高級商品、24時間スーパー、携帯電話など、生活の便利さと見かけの裕福さでは他の資本主義国と似かよったものになりつつあります。人々の暮らしはますます忙しく、思考は広がりを失いました。見上げるものが「神」や「理想」から「金」にかわり、「金持ちかどうか」「成功しているかどうか」が尊敬の基準になりました。資本主義が牙をむいてロシア文化の精神性を飲み込んでいくと嘆くのは、私があまりにもロシアを愛しすぎたからでしょうか。

そんな中で今のところ「伝統」を保持しているのが郵便局です。職員は無愛想で不親切。客の問いを無視する、睨む、命令口調。各種手続きもこれ以上はないという複雑さ。小包を送るのに12時間はかかります。まず梱包の窓口へ。国際小包の場合はその場で品目ごとにグラムをはかり記入します。「衣類」では不可。必ず「セーター○○グラム」「靴下○○グラム」と書くのです。全部量れたら職員が梱包します。国内便では持込の箱に合わせて職員がミシンをかけて布袋をつくり、それに数箇所の封ろうをします。封ろうは乾くまで待ちます。記入用紙は何枚もあり文字も細かく、年配者には特に時間がかかります。間違うと書き直しです。この間冬のコートを着込んだ客は汗だくになりながら、じっと耐えて待つのです。やっと梱包のすんだ小包を有難く抱えて、次に支払いの窓口に並びます。きつい口調の職員相手に支払いを済ませて郵便局を出るときの清清しさ。これが「ロシア人はあえて困難な状況をつくり、それを克服して達成感を得る」というロシアの伝統です。あっ、これで終わりではありません。「小包が無事着きますように!」というお祈りも。